巨大女純情詩集


アタック・オブ・ザ・ジャイアントウーマン
Attack of the 60 Ft. Centerfold(1995)
グラビアモデルとしてはやや小柄で、貧乳なのも悩みの主人公エンジェル。センターフォールド(中央見開き)を勝ち取るべく、謎の薬を処方してもらうが、過剰摂取で身長18メートルになってしまった。それが思わぬ人気を呼び、嫉妬したライバルのベティも、同じ薬を飲む。巨大化した二人は、夜のハリウッド大通りで死闘を繰りひろげる。

製作総指揮はB級の帝王ロジャー・コーマン。監督は『女切り裂き狂団チェーンソー・クィーン』『セクシー・デビル/悪魔はTバックがお好き』などの、これまたB級低予算映画で知られるフレッド・オーレン・レイである。知られているのか?


オーレン・レイは、1980年代に『続・妖怪巨大女』を企画するが、当然のごとく頓挫。ようやく念願かない、撮り上げたのが本作品である。内容的には「ゆるい」の一言に尽きる。しかし、興行的には成功したのではないかと推定できる。なぜなら……。


アタック・オブ・ザ・50フィート・チアリーダー
Attack of the 50 Ft. Cheerleader(2012)
なぜなら、帝王ロジャー・コーマンが再び巨大女ものに取り組んだからである。冴えない女子大生キャシーが今回の主人公。憧れのチアリーディング部への入部を望むも、まるで運動能力がなく、部長のブリタニーからは相手にされない。謎の新薬を注射した翌朝、キャシーは見違えるほどの美女に変身。運動能力も抜群で、一躍、注目の的となる。



事態にあわてたブリタニーは、自らも新薬を試す。例によって二人は巨大化し、夜のフットボール・スタジアムで死闘を繰りひろげる。帝王コーマン自身が学部長役を好演。ほかにも『ブレードランナー』(1982)のショーン・ヤング、この映画の監督でも何でもないジョン・ランディスなどが出演している。


われわれの夢想の中では、なぜ女性のみが巨大化するのか? 澁澤は読者にそう問うている。これは詩ばかりではなく、映画においても成り立つ設問であろう。男性が巨大化する映画としては『戦慄! プルトニウム人間』(1957)と、続編『巨人獣/プルトニウム人間の逆襲』(1958)があるばかりである。ダリル・ハンナやロジャー・コーマンのような情熱をもって、リメイク作品、派生作品が作られたという話は聞かない。

澁澤は、男性が巨大化したところで「面白くもおかしくもない」という一つの解答を用意している。無論、それもあるだろう。だが、やはり巨大女は、太古からわれわれが受け継いだ神話的イメージの現出と考える方が、より正解に近いように思う。

では、第二の作品群に話を移すことにしよう。ここからが本題である。

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