巨大女純情詩集


妖怪巨大女
Attack of the 50 Ft. Woman(1958)
「妖怪」というのもどうかと思うが、TV公開時の邦題らしい。中身は一応SFホラーである。主人公は、多額の遺産を相続した美しい人妻ナンシー。砂漠をドライブ中、不自然に毛深い手をもつ巨大エイリアンに遭遇する。町へ逃げ帰って保安官相手に大騒ぎをするが、取りあってもらえない。夫のハリーも、いい加減な慰みを言うばかりである。

理由も曖昧なままナンシーは巨大化し、夫と浮気相手とがいちゃつく酒場へと向かう。どうやらエイリアンと接触した際に、放射能を浴びて巨大化したということらしい。特撮は大雑把で、歩く巨大ナンシーの姿に背景が透けていたりする。また巨大ナンシーの手は、巨大エイリアンの手から毛を剥がしただけの使い回しである。


典型的な50年代B級SF映画だが、興行成績は上々であったようだ。そればかりか、現在に至るまでカルト的な人気を博しており、いくつもの派生作品も生んでいる。1993年には『愛しのジャイアントウーマン』としてリメイクされた。このときの主演女優ダリル・ハンナは、共同製作も兼ねるという熱の入れようであった。


キャンディロックの巨大花嫁
The 30 Foot Bride of Candy Rock(1959)
凸凹コンビとして有名なアボット&コステロの片割れ、ルウ・コステロの単独主演作品。知事の姪で美人のエミー・ルウは、なぜかアーチーにベタ惚れ。だがアーチーは、世に認められた科学者になるまでは彼女と結婚すまいと、心に誓っている。

ある日のデートの最中、エミー・ルウは放射能を浴びて9メートル級巨大女になってしまう。お嬢様育ちの彼女は巨大化しても、なお奔放にふるまい、それが災いしてペンタゴンを巻き込む大騒動へと発展する。癇癪をおこしたエミー・ルウが給水塔の蓋を放り投げ、それを軍が、火星から飛来した円盤と誤認するギャグは秀逸である。


蝶ネクタイをした、せんだみつお似の男がルウ・コステロで、アマチュア発明家アーチーを演じている。これが遺作となったようである。巨大化したエミー・ルウがパラシュートをまとう姿は、まるで女神で、神話的元型の現れを見るほかはない。


ボッカチオ '70
Boccaccio '70(1962)


4話からなるオムニバス映画である。そのうちの「アントニオ博士の誘惑」には巨大アニタ・エクバーグが登場し、謹厳実直なカトリック教徒、アントニオ博士を翻弄する。実はこれ、フェデリコ・フェリーニ監督作品だったりするのだが、私としては『妖怪巨大女』の系譜に連なる作品群に含めておきたい。

 1   2   3   Next ≫ 

 
Design by Free WordPress Themes | Bloggerized by Lasantha - Premium Blogger Themes | Dcreators